1. ネパール現地での事業・活動計画

1.1. 植林・生活林再生プロジェクト

◇ 【パルバット郡】昨年に引き続き、パルバット郡レスパル村に2016年に建設した苗畑の整備・拡充を進めていきます。新しい事業地であるレスパル村の植林事業も軌道に乗ってきています。ひきつづき、本会のこれまでの事業地の苗畑管理人を送り、交流・派遣研修をするなど、事業を通して得た叡智の有効活用方法についても住民とともに学んでいきます。COVID-19で活動が制限されるため、無理をせずに今期2021年度の育苗数は10,000本を目標とします

◇ 【ミャグディ郡】昨年度で予算上のサポートを終えたミャグディ郡バランジャ村とジーン村でも、フォローアップ続け、植林事業および果樹栽培事業を推進していきます。両村は経験を積んだ苗畑管理人の技術の向上が見られるため、今後は果樹や花卉など新規栽培植物のパイロット栽培地としての役割を確立させていきます。

◇ ダウラギリ地域~カリガンダキ渓谷で、既存のナーサリーのフォローアップに加えて、新規ナーサリー1~2カ所の開拓を計画します。これにより、育苗技術の伝播や植林の大切さを広めるため、また熟練の苗畑管理人を派遣することによるコミュニティ間の交流を推進します。

1.2. キウイ栽培によるアグロフォレストリー

◇ 昨年に引き続き、バランジャ村のキウイ栽培試験区の整備を実施し、来年度への結実に向けた準備を進めます。

◇ 本年もバランジャ村で協力農家10世帯程度を募集し、キウイ苗を無償で提供し、「IHC協力農家」としてキウイ栽培地の拡大と栽培者数の増加による地域理解の促進を進めます。

◇ アカデミアでの人脈を活用し、ネパール現地の教育機関(トリブバン大学など)、民間団体(NGO/NPO など)、日本大使館との連携を深め、現在の活動を農業支援・アグロフォレストリーとして確立します。

1.3. ポカラ近郊での農業試験サイトの開設~非木材・林産物育成プロジェクト

◇ 本年より、ポカラ近郊に新たに農業試験サンプルサイトの設営を検討します。日本から持ち込んだ野菜・果物(トウモロコシ、シイタケ、ブルーベリー、梨、桃など)の種子を播種・栽培し、地域環境への定着について検証します。これら実験区での検証によって得られた結果にもとづき、あらたなプロジェクトの計画・立案に活用します。

1.4. 現地IHC-Nの新規体制への移行

◇ 本年度より、現地IHC-Nの体制の抜本的な見直しと刷新を検討します。IHC-Nの立て直しや人員体制の見直しのほか、IHC-International(仮)などの企業法人の設立により、現地での活動をよりダイナミックに展開する計画があります。

1.6. 事業完了地のフォローアップ事業

◇ パウダル村のチーズ工房支援:

パウダル村では2000年代初めころに、チーズ工房を村人とともに設立しました。現在は、7頭の乳牛からとれた生乳で、チーズを作っています。チーズ工房の収益は、ほぼすべてがパウダル村唯一の学校に寄付されます。同村の学校は所属する教員の給与や設備などを自己資金でまかなうことが難しく、チーズ工房は貴重な収入源にもなっています。

今後は、乳用牛の提供、学校児童とのチーズ作りによるブランド化、都市部やホテルなどへの販路の拡大・確保など、IHCとして支援を提供したいと考えています。

◇ スワンタ村のロープライン整備:

スワンタ村は1970年代に、川喜田二郎先生が初めてロープラインを設営した場所であり、本会活動のいわば原点でもある土地です。この村では2本のロープラインが設置されています。このうちの1本はいまでも薪や飼料木の運搬に使用され全長はおよそ480mに及びます。

現在の課題は、ワイヤーそのものよりも荷物の運搬に使う滑車が経年劣化しているとのことでした。そのため、IHCではこの滑車2本と、新規ワイヤーの調達も含めて現地への寄贈を検討します。次回の訪問時には、村の代表者にIHCから滑車数台を贈呈したいと考えています。

◇ シーカ村等の観光客へのアウトリーチ:

シーカ村は1990年代に、集中的に植林活動を実施した場所です。現在は、カリガンダギ河からトレッキングに訪れる人々の中継地であり、多数の往来があります。今後はゲストハウスなどに、本会活動のパンフレットなどを置かせてもらい、IHCの40年間以上におよぶ活動を周知したいと思います。

以上のように、新事業から10年以上、中には40年以上の時を経て、IHC地域支援事業の成果や効果を多々見ることができます。今後もフォローアップを通じて、シーカ谷コミュニティとの交流を続けていきたいと思います。

1.7. 科研費と助成金による広域ヒマラヤ地域(ネパール/ブータン/インド北部)の調査研究

◇ 本年度2021年4月~2026年3月まで、科研費基盤研究A「ヒマラヤの人と自然の連環: 東西3地域の比較」(代表者:渡辺悌二・北海道大学教授)が採択され、分担者として研究費配分(5ヵ年で約450万円)を受けることとなりました。ヒマラヤ地域の学術研究にコミットしつつ、現地のニーズやエスノグラフィを正確に知ることで、今後の活動にもさらなるコミットメントを生み出せるようにします。

◇ 緑の地球防衛基金様よりSMBCファイナンスサービス株式会社と協力している「地球にやさしいカード」の2021年度5月の助成金配分額として、231,000円を助成いただきました。

◇ ネパールに限らず、ブータンやインド北部などでの自然科学・人文社会科学調査を実施し、ヒマラヤ地域の人々の暮らしと自然を包括的に理解することに努めます。

2. 日本国内での事業・活動計画

2.1. 国際交流・理解促進事業

◇ 第23回ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクールについては、開催に向けた準備を進めます。

◇ ヒマラヤ地域やネパール、山岳、環境保全、国際協力・交流に関心のある市民交流の場を設け、IHCの活動の普及と理解を促進します。

2.2. 国際協力イベントへの参加および広報活動、地球市民学習事業など

◇ グローバルフェスタ2020年度(10月)に出展し、本会の活動を広く一般の皆様に伝えます。

◇ 現地・国内の活動はホームページで随時報告し、会報紙「シャングリラ」を年に2回発行します。

◇ 日本国内の山岳地方が直面している問題を調査し、途上国のフィールドでの問題解決の経験と成果を活かした国内・海外の双方向での活動の可能性を模索します。

2.3. 人材育成およびネットワーキング、奨学金・助成金事業の整備

◇ 助成金事業の応募体制を整備し、若手研究者、実務者、社会起業家数名に対して、毎年少額(10~30万円)の活動費・助成金を支給する。将来的にIHCとの協働が可能な、若手研究者、社会起業家、実務家などを発掘し、ヒマラヤ地域にたずさわる人材の底上げを目指します。本会への活動の同行、業務の委託・割り当てなどを通じて、共同の可能性を模索します(京都大学、早稲田大学、筑波大学などでリクルート)。

◇ SDGsへの取り組みをするマルチステークホルダー(政府機関、企業、NGO、教育機関など)の共同勉強会に参加し、各セクターの得意分野を活かした課題対処法や取り組み方への学びを進めます。

◇ 昨年に引き続き、SDGsに向けた環境保全や生産体制のあり方に目を向け、産学官の様々な立場の人々とのネットワークキングを推進し、IHCが人と知識をつなぎ合わせるハブ機能の確立を目指します。

2.4. 学術研究面・政策提言

◇ 現地の現状や事業活動をアカデミックに調査・分析し、成果を査読誌や学会で発表します。地球人類が解決すべき喫緊の課題SDGsの理念のもと、政府機関、企業、大学、NGO、プロジェクト参画者などのマルチステークホルダーが集まり、今後の地球規模の問題解決のあり方を協議する交流会や勉強会などの場面に積極的に参画し、複数セクターが協働で活動する際に大切にすべき現地側の視点や活動を提言します。