1. ネパール現地事業(海外協力事業) - 4万5千本の植樹をめざします! –

1-1. 生活林プロジェクト

カリコーラ村
新プロジェクト地、ネパール東部ソルクンブ地域カリコーラ村

今年度は、約4万5千本の植樹を目標にします。植林地域は、既存のナルチャン村・サリジャ村にくわえ、ダウラギリ地域(ドバ村・ベガコーラ村・ダグナム村・ジーン村・バランジャ村)、さらに、ソルクンブ地域カリコーラ村(ジュビン村)です。なお、ナルチャン村での植樹活動は今年度をもって終了します。

ヒマラヤ山村民は、森林資源(薪・堆肥・家畜飼料・材木など)に大きく依存したライフスタイルをもっているため、このような取り組みは、住民の暮らしをいちじるしく改善し、特に、薪の採取・運搬において多大な労力をしいられている女性と子供たちを救うことにもつながってきます。また、この活動により、自然災害を軽減し人々の命を救うための防災林育成、山岳斜面の保全に関する基礎をつくることもできます。

カリコーラ村
新プロジェクト地、カリコーラ村の位置

このようなヒマラヤ山村民の暮らしと命を守る活動は継続してこそ大きな成果があがり、持続にこそ大きな意義があるとかんがえられます。1回限りの活動で終わらせては意味がないので、たゆまない努力を今後ともしていきます。またこれは、ネパール・ヒマラヤにおける登山・探検・国際協力の長い伝統をもつ当協会が取り組まなければならない重要な課題であり、同時にこの事業は、歴史的にみて友好親善がふかいネパールと日本との関係をさらに大きく発展させることにも貢献できます。

1-2. ダウラギリ・プロジェクト

バランジャ村の苗畑管理人
新プロジェクト地、バランジャ村の苗畑管理人・ヒラ=バハドゥール=ブダトキさん

ダウラギリ地域は、長いあいだ内戦がつづいたため、よその地域に避難していた人々が多数いましたが、現在、それらの人々が本地域に帰郷しつつあり、それにともない、植林、森林保全、森林資源利用、収入向上などについての支援要請が地元から出されました。

これらの要請に対しては、ヒマラヤ保全協会の「生活林」づくりの経験と技術を活用すれば十分に応えることができます。当協会の既存事業地ですでに養成されている苗畑管理人などの人材(ネパール人)が新事業地でのプロジェクトに協力することもでき、住民みずからが主体になった、地域に根ざした山村復興を支援することが可能です。

ダウラギリ地域
新プロジェクト地、ダウラギリ地域の位置

「生活林」とは、地域住民の生活に根ざした、住民の生活に役立つ森林であり、日本でいう里山に相当するものです。ヒマラヤの山村民は、今日でも森林に大きく依存したライフスタイルをもっているため、「生活林」をつくりだすことにより、薪・堆肥・家畜飼料・材木などの森林資源が住民に供給されるようになり、住民の生活がうるおいまた改善されます。他方、本事業地は、地滑りや山崩れなどの自然災害が多発しているので、その対策となる地域防災にも大きく貢献できます。さらに、森林資源を有効に活用した収入向上プログラムなどの実施により地域の活性化を実現できます。

ヒマラヤ保全協会は、カリガンダキ川東岸地域(ミャグディ郡)において「生活林」づくりプロジェクトをすでに実施し、植林、森林保全、森林資源利用、収入向上、地域活性化の各プログラムに取り組みました。この実績をカリガンダキ川西岸域のダウラギリ山麓地域においても活かし、さらに発展させていきます。先のプロジェクトでは、苗畑を建設、植林を実施、森林再生と森林保全の成果が上がりました。また、森林資源の住民への供給に取り組み、これらの目標は達成されました。さらに、森林資源を有効に活用した生活改善・収入向上事業も試みましたが、これらはまだ発展途上であり、今後の展開が期待されています。ダウラギリ・プロジェクトの具体的な活動は以下の通りです。

苗畑運営
ダグナム村の苗畑と苗畑管理小屋
あらたに建設された、ダグナム村の苗畑と苗畑管理小屋(人物は、苗畑管理委員長のエク=バハドゥール=ガルブザさん)
  1. 森林委員会の下に苗畑委員会を組織、苗畑管理人を決めます。
  2. 自主的に委員会を運営できるように活動計画をつくります。
  3. 苗畑管理人を養成するための研修を実施します。
  4. 植林計画をつくり、樹種を選定、種子を購入します。
  5. 資機材を購入して苗畑(インフラ)を建設、拡充していきます。
  6. 苗畑管理人が中心になって苗畑で苗木を育成します。
  7. 水源を確保し、給水施設を建設、配水します。
  8. 苗畑委員会を定期的にひらき、持続的に苗畑を管理運営します。
植林活動
新植林地(ジーン村)
新植林地(ジーン村)
  1. 適切な植林地を調査・選定します。
  2. 動物の食害から苗木をまもるフェンスをつくります。
  3. 植林地に村人が苗木を植樹します。
  4. トレイル(山の道)を建設します。
  5. 森林委員会・苗畑委員会が中心になって森林の管理体制をつくります。
  6. 住民が参加するトレーニングをおこないます。

これらの活動により、苗畑ができ、苗木を継続して育成する体制ができあがります。また、森林を保全しつつ、森林資源が住民に供給される道を切りひらくことができます。こうして、地域の自然環境が保全され、それをいかした生活改善が実現されていきます。

樹木園(arboretum)を建設
樹木園建設予定地(バランジャ村)
樹木園建設予定地(バランジャ村)
  1. 地域の希少植物と生態系を保全するために、バランジャ村の植林地の一角に樹木園(arboretum)を建設します。
  2. この樹木園で、住民や学校の生徒が地域の植生や自然環境についてまなびます。
  3. 地域の自然環境に関する住民の意識を高めます。
  4. アグロフォレストリーの試験場としても機能させ、果樹の育成などにとりくみ、将来の収入向上プログラムにむすびつけます。
  5. 管理小屋を建設します。
植樹計画

2014年度に、ヒマラヤ植樹100万本達成を目指します! -生活林づくりプロジェクト・植樹計画-

1-3. 生活改善プログラム

昨年度にひきつづき、ベガ村において、金属製改良かまどの普及をおこないます。本年度は25世帯に設置します。これにより、かまどの熱効率があがり、薪の使用量を各世帯で40〜50%減らすことがきます。したがって、森林保全に貢献するとともに、薪運搬量をへらせるので労働の軽減にもなります。また、煙突も設置するので煙が室内に充満することがなくなり健康にもよいです。調理時間も短縮できます。

1-4. その他の事業

めぐまれない小学生21人に奨学金を支給します。なお、長年おこなってきました奨学金支給プログラムは本年度末をもって終了します。

2.国内事業

2-1. ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール(国際交流・理解促進事業)

ヒマラヤ植樹

学び合いの精神に基づき、日本人が、ネパールの事業地に行って、ヒマラヤ保全協会の事業を見学、植樹などをおこないながら環境保全活動に参加、現地の人々と交流して相互理解をふかめます。今年は、あらたに、ダウラギリ・プロジェクト(5ヵ年計画)を開始しましたので、その現地視察を組み込んだあらたなプログラムを計画をしています。 2012年2月に開催予定です。

2-2.広報・地球市民学習事業

ヒマラヤ・ワークショップを開催

ヒマラヤ・ワークショップを2011年9月から開始します。共通テーマは「ヒマラヤよ永遠に! -ヒマラヤを愛して40年-」です。各回、専門家によるプレゼンテーションを踏まえ、情報収集法と情報処理法のワークショップをおこないます。

  • 第01回 ヒマラヤって何? ネパールってどんなところ? -多様性の世界-
  • 第02回 ヒマラヤ保全協会創設者・川喜田二郎先生の足跡 -登山・探検から技術協力へ-
  • 第03回 山岳環境保全のパイオニアワーク -なぜシーカ谷だったのか-
  • 第04回 ムスタン・エコミュージアムの光と陰 -チベット世界への扉はひらけたか-
  • 第05回 ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール -国際協力への日本人参画の道-
  • 第06回 事業地の拡大と村落開発 -NGO活動にも舵取りが必要-
  • 第07回 収入向上プロジェクト -チーズ製造販売と織物・紙漉事業-
  • 第08回 ダウラギリ地域への展開 -ネパール、内戦から復興へ-
  • 第09回 ヒマラヤの民族多様性と民族問題 -NGO活動の実践を通して-
  • 第10回 ヒマラヤよ永遠に! -エベレストへの道-
イベントや講習会の開催

会員相互の親睦をはかり、国際協力について理解をふかめるために、ネパールサロン、参画型アプローチ「KJ法」講習会などを開催します。また、グローバルフェスタにも出展します。

広報活動の充実

ホームページやブログなどをたえず更新し、事業の進捗状況を随時報告します。会報「シャングリラ」とメールマガジンを充実させます。様々な学習活動に講師を派遣します。

ヒマラヤ保全協会のイベントの案内を見る >

2-3.研究・提言・ネットワーク事業

(1)ネットワーク

ネパール現地カウンターパートとして、ヒマラヤ保全協会ネパールのほかに、カリコーラ・トラストと契約を締結し、あらたな協力関係を構築、植林事業をおこないます。草の根技術協力事業を通して、国際協力機構(JICA)と協力して事業をすすめます。ネパールNGOネットワーク(4N)に団体会員・事務局として参画し、特に、そのホームページを充実させ、ネパールでのNGOネットワークを強化します。国際協力NGOセンターとシーズ(市民活動を支える制度をつくる会)に団体会員として参画します。

ネパールNGOネットワークを見る >

(2)研究・提言

流動的なネパール情勢について情報収集・研究し、その結果を公表するとともに、適切な情勢判断のもとで事業を円滑にすすめます。日本人専門家を現地に派遣し、ニーズにこたえる適正な提言をおこないます。

(3)東日本大震災復興支援会を組織し、支援活動をおこないます。