2011年度も、ご支援ご協力をいただきまして誠にありがとうございました。ご納入いただきました寄付金などにより、約5万5千本の植樹をすることができました。深くお礼申し上げます。

1. ネパール現地事業

事業地の位置図

1-1. 「生活林」づくり

植林地
ドバ村の苗畑

2011年度は、54664本の苗木を育成し、植樹しました。「生活林」とは日本でいう里山に相当する林のことです。植林地域は、ダウラギリ地域(ドバ村・ベガコーラ村・ダグナム村・ジーン村・バランジャ村)、アンナプルナ地域(サリジャ村)、ソルクーンブ地域(ジュビン地区カリコーラ村)でした(上図:プロジェクト地域の位置図参照)。

苗木を植える
そだった苗木を植える

ヒマラヤ山村民は森林資源(薪・堆肥・家畜飼料・材木など)に大きく依存したライフスタイルをもっているため、この取り組みは、ヒマラヤの自然環境を保全するだけでなく、住民の生活をいちじるしく改善することにもなりました。特に、薪の採取・運搬において多大な労力をしいられている女性と子供たちの労働を軽減することにもつながりました。また、山岳斜面が保全できたので、自然災害を軽減し人々の命を救うためにも役立ちました。

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1-2. ダウラギリ・プロジェクト(その1)

植樹
村人が総出で植樹にとりくむ

ネパール西部、ダウラギリ地域は、長いあいだ内戦がつづいたため、都市部に避難していた人々が多数いましたが、現在、それらの人々が本地域に帰郷しつつあり、それにともない、植林・森林保全・森林資源利用・収入向上などについての協力要請が地元から出されていました。

これらの要請に対して、ヒマラヤ保全協会の「生活林」づくりの経験と技術を活用してこたえました。当協会の既存事業地ですでに養成されている苗畑管理人などのネパールの人材が、この地域でのプロジェクトに協力することもでき、住民みずからが主体的に参画した、地域に根ざした活動をすすめることができました。

具体的な活動は以下の通りでした。

  1. 各村で、森林委員会の下に苗畑委員会を組織、苗畑管理人を決めました。
  2. 自主的に委員会を運営できるように活動計画をつくりました。
  3. 苗畑管理人を養成するためのトレーニングを実施しました。
  4. 植林計画をつくり、樹種を選定、種子を購入しました。
  5. 資機材を購入して苗畑を建設しました。
  6. 苗畑管理人が中心になって約3万4千本の苗木を育成しました。
  7. 水源を確保し、給水施設を建設、配水しました。
  8. 適切な植林地を調査・選定しました。
  9. 動物の食害から苗木をまもるフェンスをつくりました。
  10. 植林地に苗木を植樹しました。
  11. 樹木園を建設しました(地域の希少植物と生態系を保全するために、バランジャ村の植林地の一角に建設しました)。

1-3. ソルクーンブ・プロジェクト

苗木
カリコーラ村でも苗木を育成する

ネパール東部、ソルクーンブ郡カリコーラ村においてあらたに苗畑を建設し、約2万本の苗木を育成しました。苗畑管理人2名をあらたに養成しました。

1-4. 現地住民の生活改善・収入向上(ダウラギリ・プロジェクト その2)

(1)金属製改良かまどの普及

ベガ村とドバ村において、金属製改良かまどを45世帯に普及しました。これにより、従来の土のかまどにくらべて熱効率があがり、薪の使用量を各世帯で40〜50%減らすことがきました。森林保全に貢献するとともに、薪運搬量も減らせたので労働の軽減にもなり、また、煙突も設置したので煙が室内に充満することがなくなりました。調理時間も短縮できました。

(2)織物・紙漉プロジェクト

サリジャ村において、昨年度にひきつづき織物・紙漉プロジェクトをすすめました。生産技術は一定水準に達しましたので、マネージメントを強化し、商品を販売し利益を上げられるようにしました。

(3)養蜂・椎茸栽培プロジェクト

バランジャ村において養蜂トレーニングを実施、蜂蜜の生産を開始しました。ジーン村において椎茸栽培トレーニングを実施、椎茸の栽培を開始しました。これらは、住民が食べるとともに、将来的には町で販売して、住民の収入向上をはかります。

2. 国内事業

2-1. 国際交流・理解促進事業

エコロジー
アンナプルナ・ヒマールをのぞむ(山岳エコロジースクールにて)

第20回ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクールを2012年2月に開催しました。アンナプルナ地域(上の位置図参照)にあらたに建設されたトレッキングルートをあるき、ヒマラヤ保全協会の旧事業地であるナンギ村、標高3300mのモハレダーラ展望台などをへて、サリジャ村を訪問、植樹をするとともに、織物・紙漉プロジェクトを見学しました。

2-2. 広報・地球市民学習事業

ホームページやブログなど、インターネットを活用した広報活動を充実させました。フェイスブックやツイッターもはじめました。地球市民講座「ヒマラヤワークショップ」を3回開催し、ヒマラヤ保全協会の過去の活動を総括し広報しました。

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2-3. ネットワーク・研究・提言事業

(1)ネットワーク

ネパール現地カウンターパートとして、ヒマラヤ保全協会ネパール、カリコーラ・トラストと協力して事業を実施しました。草の根技術協力事業を通して国際協力機構(JICA)と協力して事業をすすめました。ネパールNGOネットワーク(4N)に団体会員・事務局として参画し、特に、そのホームページを充実させ、ネパールでのNGOネットワークを強化しました。また、国際協力NGOセンターとシーズ(市民活動を支える制度をつくる会)に会員として参画しました。

(2)研究・提言

流動的なネパール情勢について情報収集・研究をし、ホームページやブログにその結果を公表するとともに、適切な情勢判断のもとで各プロジェクトを円滑にすすめました。

(3)東日本大震災復興支援会の活動

募金活動をおこない、多くの会員や有志の皆様のご協力のおかげで支援金があつまりました。被災地域にお住まいの会員様につきましては、2011年度の会費を免除し、またお見舞金を差し上げました。在日ネパール人協会が主催する被災者支援ボランティア活動に参加しました(岩手県陸前高田市にて炊き出し)。イピルイピルの会と協力し、宮城県気仙沼市と岩手県野田村などにおいて植樹活動をおこないました。

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