1. ネパール現地事業 〜約4万本を植樹しました〜
1-1. 生活林づくりプロジェクト
2010年度は、合計44,204本の苗木を育成、植樹をおこないました(2011年6月集計)。これで、苗木育成本数の累計は約80万本に達しました。事業地は、ナルチャン村・サリジャ村・ドバ村・ベガコーラ村でした。具体的には以下の活動をしました。
- 苗木の種子を購入しました。
- そだった苗木を植林地(荒廃地)に植えました。
- 苗畑等に水を供給するための水道をつくり、苗木育成を強化するとともに、村人の生活を改善しました。
- 植林地を保全するための防護壁(フェンス)をつくりました。
- 地盤を安定させ、村人にとって安全な土地をつくり、地すべり・土砂災害などの自然災害を防止しました。
- 苗畑と森林を管理する管理人を現地で養成しました。
- 苗畑委員会を組織し、森林の管理運営体制をつくり、持続的継続的な森林保全を実現しました。
- 日本人の森林専門家・環境専門家を現地に派遣し、調査・指導をおこないました。
植樹した樹種は、マツ・ハンノキ・サクラ・飼料木・果樹(オレンジ・レモン)・サンショなどでした。
また、紙漉事業も推進しました。サリジャ村とナンギ村で製造したロクタ紙(ネパール紙)を、カトマンドゥの工房に少量ではありますが初納品することができました。これで、「ファンドレイジング → ヒマラヤ保全協会の植林・森林保全活動の推進 → 計画的なロクタ紙の原材料確保 → 新商品の製造販売 → さらなる植林・森林保全活動 →」という、ファンドレイジングとネパール現地事業の一連のサイクルを動かすための第一歩を踏みだすことができました。
ヒマラヤ保全協会の活動はただ木を植えるだけの活動ではありません。木を植えながら、森林を保全し、そして、森林資源をつかって住民の生活を改善していきます。このサイクルにこそ、自然と人間とが共生できる具体的な実践形態があります。これからも、このサイクルを強化し、事業をさらに推進していきます。
1-2. ダウラギリ・プロジェクト
既存事業地の西部(カリガンダキ川の西部)のダウラギリ地域(ダグナム村・ジーン村・バランジャ村)において、あらたに、ダウラギリ・プロジェクト(生活林づくりプロジェクトを通した山村復興支援プロジェクト)を開始しました。
2010年度は、2〜3月に、ダグナム村・ジーン村・バランジャ村にあたらしい苗畑をそれぞれつくり、苗木の育成を開始しました。今夏からあらたな植樹ができる予定です。
1-3. エコ・プロジェクト
ネパールでは、住民のライフスタイルの変化、ツーリストの流入などにより、様々なゴミが多量に廃棄されるようになっています。
そこで、村にゴミ箱を設置し、ゴミ集積場を建設する活動をおこないました。2010年度は、スワタ村・パウダル村・ドバ村・ベガ村においてあらたに実施しました。この活動は、(1)クリーン・ビレッジ化、(2)環境教育、(3)エコツーリズム、という3本柱を基軸にしてすすめられ、環境保全(公害防止)とともに住民の衛生管理・生活改善を実現し、地域の活性化に貢献しました。住民の生活を改善するだけでなく、観光立国ネパールのためにも重要な活動でした。
1-4. ムスタン・エコミュージアム
ムスタン・エコミュージアム(MEM)基金の活用のあり方について調査・検討しました。
ネパールのナショナル・トラストは、MEM管理運営をムスタン郡ジョムソンの地元母親グループに対して委嘱(2010年から1カ年間)されたところ、委嘱期間をさらに5カ年間延長する予定になっています。MEMの展示施設は一部老朽化が進み雨漏りがみられるほか、展示物について更新がなされない等、MEM施設の維持管理および今後の運営には改善すべき点が多いです。上記委嘱を受けた住民の組織団体によるMEMの管理運営の方針、意向等については、現段階で確定しがたい面があり、今後の推移に待たねばなりません。
今回の調査結果ならびに既往の理事会確認を踏まえれば、現在MEM管理運営を行う地元組織からの将来的な支援要請に対してMEM基金の設立趣旨に基づいて的確に対応する必要性が生じることも考えられるため、MEM基金を現行のまま当面保有することが適当です。
1-5. その他の事業
生活改善プログラムとして、ベガ村の25世帯に、金属製改良かまどを普及しました。その結果、各世帯で、薪の使用量を40〜50%減らすことができました。教育支援プログラムとして、めぐまれない子供たち20人に奨学金を支給しました。環境保全専門家育成プログラムとして、ネパール人大学院生1名に奨学金を支給しました。
2. 国内事業
2-1. 国際交流・理解促進事業
村人とミーティング(サリジャ村)
学び合いの精神に基づき、第19回山岳エコロジースクールをサリジャ村〜ナンギ村で開催しました。テーマは、「ナンギ村の教訓をサリジャ村でいかすには」でした。近年、出稼ぎのために外国へ行くネパール人男性が急増したため(村をはなれる男性が多くなったため)、国際協力のすすめ方にもさらなる工夫がもとめられ、地元にのこっている子供たちや女性たちのためにも、地域の環境保全や住民の生活基盤づくりが特に重要になっていることが明確になりました。
2-2. 広報・地球市民学習事業
ホームページ、 会報「シャングリラ」、ブログ、ツイッター、メールマガジンなどを充実させました。ネパールサロン、地球市民講座、参画型アプローチ講習会などを開催しました。グローバルフェスタ2010にも出展しました。JICA地球ひろばや明治大学に講師を派遣しました。
- ボランティアデー「シェルパとの出会い -エベレスト街道入門-」
- ボランティアデー「新プロジェクト -ダウラギリ山麓への展開-」
- 第30回ネパール・サロン「ヒマラヤの自然をいかしたライフスタイル ーマガールとタマンを例としてー」
- 第31回ネパール・サロン「ヒマラヤ写真教室:過疎化しないタマンの里」
- 第32回ネパール・サロン「森林および環境破壊の現状 -エベレスト街道展望-」
- 第33回ネパール・サロン「ダウラギリ・プロジェクト説明会」
- 地球市民講座「ヒマラヤ現地の人々の声」
- JICA地球ひろばネパールセミナー「世界の屋根・ヒマラヤの大自然を未来につなぐ国際協力 - 住民主体の環境保全 -」
- 第8回 参画型アプローチ初級講座
2-3. ネットワーク・研究・提言事業
ネパールNGOネットワーク(4N)に、団体会員、事務局として参画しました。国際協力NGOセンター(JANIC)、シーズ(市民活動を支える制度をつくる会)に団体会員として参画しました。国際協力機構(JICA)や企業との連携を強化し、財政基盤を整備しながら事業を推進しました。流動的なネパール情勢について調査・研究をし、発表しました。東日本大震災に際し、東日本大震災支援全国ネットワークに加盟し、また、在日ネパール人等災害被災者支援活動をおこないました。