~ヒマラヤの自然と調和した癒しの世界~

ヒマラヤには、地域の自然を生かした健康法が古くから伝わり、近年その効用が見直されています。今回は好評だった第1回に引き続き、ネパール現地と日本におけるヒーリング方法なども参考にしながら、自然と人間が調和していく方法や、心身の活性化などもさらに探りました。

【日 時】2009年7月11日(土)13:30~16:30
【会 場】環境パートナーシップオフィス・会議室 > 地下鉄・表参道駅B2出口から約5分
 (環境パートナーシップオフィスは国連大学内一階ですが、
  会場の会議室は斜め後ろのビル地下です)
【参加費】 会員:1300円 非会員:1500円(参加費はヒマラヤ植樹費になります)
【主 催】特定非営利活動法人ヒマラヤ保全協会

【プログラム】
1:00 受付開始
1:30 開会の挨拶、講師紹介
1:40 基調講演
「QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)におけるヒーリングの効用」
 ~ネパールと日本の山村支援活動の例なども通して~(会員 吉川りょう)
2:40「癒しの世界のご紹介 ハーブオイル、エッセンシャルオイルによる癒しと活性化の世界」
 (会員、ナチュラルオイル専門家 秋本尚希)
「ネパールにおける礼拝にての癒し効果」(ネパール人講師など)
3:10 ワークショップ:各講師のグループに分かれてフリータイム形式でヒーリング体験
4:30 総括、閉会の拶後

基調講演(要旨)

■ ヒーリングとQOL
 QOL・・人生の質、生活の質という意味であり、どれだけその人なりの人生や生活に満足しているか、納得しているか、何を幸せの価値基準においているかがポイントであるが、医療の現場では部分的な意味で使われることもある。西洋医学はすなわち高度な医療機器や検査によって非常に発達・発展を遂げたが、反作用や弊害も出ている。→その人らしい生活ができているかどうか。
 QOLの向上→「医療サービスの提供」「心のこもった看護・介護」「安全安楽の精神」「趣味の提供」などによってはかる。
 ヒーリングの捉え方→病気と本人、身体と心を分けて考えることはなく、身体も精神もその人の生き方、価値観も含めた大きな生命、またはこの宇宙の中で生かされている存在としてみる。ヒーリングにより症状の改善のみならず、心の問題、生き方の改善が加わり、心身の健康が促進される。人生においていい事が増えてくる。→QOLの向上につながる。

■ 講師本人の体験
 長年、自律神経系統の疾患を患う。医者になるべく西洋医学の道に入り、西洋医学以外にも、様々な療法を学んでいく。しかし、それでは足りないものを感じる。例えば西洋医学の物事を徹底的に分析する点や、高額な医療機器を駆使した検査力は素晴らしいが、慢性疾患や、統合的な治癒力に関しては、解決しえない部分がある。
 そのような中でヒーリングと出会い、病気が治癒。また、身体が楽になるばかりでなく、心も落ち着いてきて今までの自分を反省し、些細な事にも感謝の念を持つようになる。心が整理されてくると身体もますます楽になってきた。ヒーリングをうけていくうちに価値観や実際の行動も、自然・宇宙のリズムに合わせるようになり、心身が楽になるだけでなく、人生においても運気が回ってくるのを感じた。→人間の心と身体、生き方が密接な因果関係がある事を知り、医師としての道ではなく、ヒーリングやカウンセリングの専門家として、生きていく事を決意した。
 ヒーリングのそのほかの効果→お互いが向き合って、人に対し、相手を癒す行為をすることによって、人間に対する信頼が蘇ってくるという効果もある。そして物質的な価値観から、より精神的な喜びを重要視する価値観に移行していく。ヒーリングを日々の生活に取り入れる事が有益。
 QOLは百人いれば百人違う。しかし同じ人間として共通するものはある。人間は成長に伴って価値観は変ってくるが、心が満たされない時は次のステージに向かおうとしている証拠であり、その心の変遷の中で、言葉や文化や生活習慣、また性格が違っても人間としての共通の価値観が見出されてくる。ヒーリングは国・文化・宗教等関係ない。

■ 日本やネパールの山村での支援活動例
 ネパールでは一見不便に思える状況の中、慣れてくると次第に居心地がよくなり、ネパールの魅力にひきこまれていった。ネパール人はみな親日的で、笑顔でナマステと言ってくれる。甘いミルクティーを飲みながら、ひがな一日ヒーリングをする事もあった。エイズ患者さんの施設にも数回訪問し、ヒーリング後に気持ちが晴れてきたとよく言われた。
 ヒーリングをうけに来る方は比較的、頭痛や腰痛、胃潰瘍、糖尿病、精神疾患の方が多く、うけたあと、身体や気持ちが楽になったなど、効果はあらわれていた。
 同じ人間として、言葉が通じなくても、心が強くつながっていく事を実感。ネパールは政治的・社会的な問題を抱えた国だが、そういった事より、その高い精神性や人々の率直さ、優しさ、歴史的・文化的な重要性のほうに、むしろ目を向けるべきであり、あらためて現代の日本人が忘れかけている何かを思い出させてくれる国である。
 日本の山村でも、のどかな風景の中、ヒーリングしてまわった。人から人づてに、ヒーリング依頼がきて、ケガの後遺症や難病患者さんの容態がよくなっていった。ある四国の山奥などでは、家の鍵をかける習慣がない。おおらかでのんびりしており、隣近所の信頼関係がまだ息づいている。物質的な価値観を否定したり、昔に戻ろうなどと主張するのではなく、QOLというものに思いをはせていくと、結局は温かい家庭であるとか、仕事や趣味に一生懸命に取り組みとか、誰かのために生きるとか、古典的・道徳的なテーマに舞い戻ってしまうのも事実だが、物質文明と精神文明のちょうどよいバランス、偏らない中庸をとっていく事が大事。

■ 今後の日本社会におけるヒーリングの効用
 ヒーリングは経済的にみても非常に有益。日本の国家財政は危機に瀕しているといわれている。現在の急速な高齢化は納税人口を減らし、西洋医学中心の医療費の増大により、ますます国家経済は圧迫されている。ヒーリングは西洋医学に比べて問題にならないほど安価であり、習得も可能である。自然治癒力そのものに働きかけ、人間の生命力の向上にもつながるので、薬漬け医療問題に対しても、解決の一端になることが期待されている。
 また、予防医学にもつながる。心身の不調を緩和するヒーリングは、予防医学のひとつの大きな手段ともなりうる。ヒーリングの効力と心の成長によるストレスへの対処は、病を未然に防ぐ意味でも、またその結果にともない発生する医療費の問題においても、メリットが大きい。人間にも社会に対しても、よきアプローチの方法ともなる。
 リハビリテーションの観点からも、ヒーリングを取り入れる事のメリットは伺える。勿論、病気や障害によって阻害された機能の回復といった意味もある。しかし広い意味では、人間性の回復、信頼関係の回復、価値観の回復といおった現代社会が失いつつあるものの回復という意味でも、ヒーリングが役に立つことはおおいに考えられるし、実現可能である。日本の体力低下が叫ばれる今だからこそ、大きな転換期とみなし、ヒーリングが与える素晴らしい影響を考え、今後の果たす役割も考えていくことは非常に大きい。

■ 講師紹介:吉川りょう(きっかわ りょう)

ヒマラヤ保全協会会員。1975年東京都世田谷区出身。学生時代より医療や癒しの世界に関心を持ち、国立大学の医学部に在学中から卒業後においても、西洋医学のみならず東洋医学を始め、各療法を探求する。その課程で薬に頼らない癒しと心身向上をライフワークとすべく、ハンドパワーや瞑想なども取り入れたヒーリングによる人体への効能を強く実感し、2004年からカウンセリングとヒーリングの専門家としてのボランティア活動を、日本全国およびネパールなどで展開中である。その体験とヒーリング実践は第一回のヒマラヤン・ヒーリングでも好評で、日本社会におけるヒーリングをはじめとした癒しや心身向上分野の定着を担う、若手のホープである。

■ 講師紹介:秋本尚希(あきもと なおき)

あきもと食品代表。1979年茨城県生まれ。 大学在学中に自然保護の課題で産業用ヘンプを論文で書いたのをきっかけに、 産業用ヘンプの必要性・多用性の素晴らしさを知る。カナダ留学中に現地の優れたヘンプオイルを知ったのをきっかけに、日本での販売を始める。 ヘンプナッツオイルを元に、スキンケアオイル、手作り石鹸などを作り、全国各地の イベントなどに出店しお客様とのコミュニケーションを大切にしながらヘンプナッ ツオイルを紹介している。また、ハーブオイルやヒーリングに関する研鑽も積み、ナチュラルオイルとヒーリングの融合の世界を演出する、異色の若きヒーラーである。

ヒマラヤはヒーリングの場としての機能を果たしてきた

 ヒマラヤはふるくからの巡礼の地です。具体的にはヒンドゥー教や仏教の聖地ですが、実際には、民族・宗教・文化・国家をこえて実に様々な人々が世界中からあつまる地域であり、人々の心をいやす場として機能してきました。現代人の中には、ストレスなどで心身を病む人々がたくさんあらわれてきましたので、このような人々の心身をいやす、今日の言葉でいうヒーリングの場としての役割もヒマラヤは果たしてきたのです。
 7月8日に永眠された、ヒマラヤ保全協会創設者の川喜田二郎先生は、ヒマラヤの高度な精神世界を踏まえて、物質文化だけではなく精神文化形成の重要性をとかれました。私たち現代人は物質文化に毒されておりますので、一方で精神文化をもっとしっかり追求していかなければなりません。ヒマラヤ地域は、このような点においても地球上の中で重要な位置を占めているとかんがえられる訳です。
 今日おおくの人々が、西洋型科学技術文明あるいは物質文明の行きづまりに気がつきはじめています。川喜田先生は早くから西洋文明の限界を指摘し、晩年には「没我の文明」を提唱されました。没我とは、我をわすれること、無我無心、無私無欲になるということです。日本人は昔から「我をわすれて」と形容するように、「我をわすれて」とりくむ仕事こそ創造的な仕事であり、このような境地に達してこそ真に創造的といえるのです。したがって「没我の文明」とは創造的な文明です。
 今日私たちは文明の大きな転換点をむかえています。このような文明転換の時代にのぞんで、私たちは我を拡大するのではなく、「没我の文明」を生みだすことが必要なのであり、そのキーポイントは創造性にあります。私たちはこのような大きなビジョンもって、ヒマラヤを活用しながら、これからも一歩一歩すすんでいくことが重要だとかんがえています。