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2018年2月開催予定です!!MES2016_表

第24回 ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール

テーマ:百聞は一見にしかず 国際環境協力の現場を見る!

~ヒマラヤ・トレッキングと事業地見学~

※ 本ツアーは、募集型企画旅行(パッケージツアー)です。

参考:2016年のMESのチラシ:
画像をクリックするとパンフレットが表示されます。→

「エコライフ in ヒマラヤ」~ヒマラヤで学ぶエコロジー~
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感動体験を実現します】世界の屋根・ヒマラヤをトレッキングして、大自然を体感します。その美しくもダイナミックな峰々の雄姿は、皆様ひとりひとりの感動体験を実現します。

村人と出会います】ヒマラヤのふもと、ネパールの のどかな山村でホームステイをし、心やさしい村人たちと生活しながら交流します。ヒマラヤで暮らす人々との出会いは、生涯わすれられない思い出になるでしょう。

植樹をします】ヒマラヤ保全協会の森林保全プロジェクトに参加、村人とともに植樹をします。自然の中で暮らすための知恵や技術をまなび、環境保全と国際協力について考えます。私たち日本人の暮らしを問い直すことができるでしょう。

地球人として】近代化と人口増加の影響で、環境が破壊され、伝統文化が衰退、本来は豊かであったヒマラヤの人々の暮らしは危機的状況になっています。村人たちが直面する問題に触れ、同じ地球人として私たちに何ができるか共に考えます。

1.多様な自然環境と様々な民族に出会えます!

ネパール・ヒマラヤ鳥瞰図
ネパール・ヒマラヤ鳥瞰図(衛星図)

■ 1-1. 沖縄から北極までに相当する自然環境が見られます

ヒマラヤとネパールの位置

ヒマラヤとネパールの位置

 ヒマラヤ山脈は、北上するにつれて標高は高くなり、気温は低くなります。
ネパールで標高がもっとも低いタライ低地の年平均気温が摂氏25度の年に、チベット系の人たちの暮らす標高4000メートルの高地では7.4度となります。これを日本におきかえてみますと、前者の年平均気温は那覇、後者のそれは札幌の値に対応します。タライから高地までの水平距離は200キロメートルほどですから、大阪から名古屋ほどの距離の間に、日本列島全体の気温差が存在することになります。さらに、ヒマラヤの最高地は8000メートルにまでおよび、その気温は北極に相当します。
つまり、ネパール・ヒマラヤには、沖縄から北極までの気温差がつめこまれているということになります。
こうして、ネパールを南北にあるいて縦断すると、そこでは、亜熱帯から温帯、冷温帯、寒帯、さらに雪氷帯までのさまざまな自然環境に遭遇し、実に多種多様な植物を見ることができるのです(ネパールで現在までに記録された植物は約5500種で、そのうちの246種がネパール固有のものです)。
このようにネパールは、国土が小さいわりには、著しく変化に富む自然環境をもち、多種多様な植物が存在する特異な地域といえ、世界にまれに見る「自然環境(地球環境)の模式地」となっています。

■ 1-2. 自然と人間がつくりだす実に多様な世界を実感できます

カリガンダキ川
カリガンダキ川

自然環境は、まず空間的にとらえ、次に時間的に分析し、そして自然史を総合的に想像するというステップをふむとよく理解できます。また、自然環境こそが、その地域の基本的な枠組みをつくりあげていること、その枠組みを決めるもっとも基本的な要素は地形であることをおさえておくとよいでしょう。
ネパールでは、せまい国土の中に実に多様な自然がつめこまれています。これは、旅やフィールドワークという観点に立つと、比較的短い時間の中で効率よく、自然環境の多様性を観察できるということになります。つまり、ネパールは自然を勉強するフィールドとして世界でもまれにみるすぐれた場所といえます。
ヒマラヤ保全協会の活動地域は、西ネパールのカリガンダキ川流域にひろがっています。この大河は、ヒマラヤを南北に切って流れていますので、私たちの活動地域においても、この川にそって南北にあるけば、実に多様な自然環境と、そこでくらす実に様々な民族に出会うことができます。
このような観点にたって、ヒマラヤ保全協会の活動地域を訪問すれば、自然や民族に関する理解を一気にすすめることができ、自然と人間がつくりだす多様な世界を実感することができるのです。
下図は、ヒマラヤ保全協会の事業地であるカリガンダキ川付近の「ヒマラヤ模式断面図」です。

 

ネパール・ヒマラヤの断面図

【解 説】高度差を利用した多様な「環境体験」ができる
ネパール・ヒマラヤは、標高約60mの低地から、世界最高峰エベレストの8848mまでの世界最大の高度差をもつ地域であり、この大きな高度差が実に多様な自然環境を生みだしている。
ヒマラヤの自然環境を理解するためには、まず高度と植物に注目するのがよい。高度と植生には見事な対応関係があり、次のようにまとめられる。

■ 5500m以上:氷雪帯(氷河があり、植物はそだたない)
■ 3800~5500m:高山帯(樹木は無く、低木、草、高山植物など)
■ 3000~3800m:亜高山帯(シャクナゲ、モミ属針葉樹、ズダヤクシュなど)
■ 1000~3000m:照葉樹林帯(ツバキなど葉がテカテカ光る樹木に代表される)
■ 0~1000m:落葉広葉樹林帯(暑さと乾燥のため、乾季に葉を落とす樹木に代表される)

月平均気温が5度C以上の月平均気温から5を引いた値を積算した値を「暖かさの指数」といい、これは、標高1000mでは180、標高3000mでは70、標高8000mでは0となっている。
ヒマラヤで有名な高山植物としては、セイタカダイオウ、アオイケシ、ユキノシタ、シオガマギク、サクラソウ、リンドウ、トウヒレン、キケコン、スゲ、イワベンケイ、ワタゲトウヒレンなどがある。セイタガダイオウは特に有名で、その印象的な形態は多くの人々の記憶にのこる(その模型と解説は国立科学博物館で見ることができる)。セイタカダイオウは、その内部は外気よりも約8度あたたかく、成長するのに7~8年かかる。東ヒマラヤでは降水量が多いので大きな高山植物がそだつのだという。
ヒマラヤ保全協会の「ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール」では、ポカラでは落葉広葉樹林帯を、トレッキング中のプンヒルでは亜高山帯を、それ以外の場所では照葉樹林帯を直接観察することができる。また、プンヒルやナルチャンでは高山帯~雪氷帯を比較的間近で見ることができる。したがって、落葉広葉樹林帯~氷雪帯までの多様な自然環境を比較的短期間で見わたすことができるわけで、このような効率のよい自然環境体験(フィールドワーク)はほかの地域では決して得られない。
「山岳エコロジースクール」でホームステイする村の環境は照葉樹林帯に属し、多くの人々が日本の自然環境(景色)と似ていることに気がつく。それは植生が似ているからである。実は、照葉樹林帯はヒマラヤ中間山地から中国をへて西日本までつらなる非常に大きな植生帯であり、この地帯では「照葉樹林文化」とよばれる独自の文化が花開いた。
したがって、「山岳エコロジースクール」では、まず、ヒマラヤの多様な自然環境を大観でき、次に、照葉樹林文化に接することにより、ヒマラヤを理解するだけでなく日本の自然をとらえなおすことができる。
このように、ネパール・ヒマラヤは非常にすぐれた「大自然の学校」であり、この地でのエコツーリズムの可能性はとても大きいといえる。

2.国際協力・環境NGO”ヒマラヤ保全協会”の現地活動に参加します!

国際協力・環境NGOがおこなうエコツアー(スタディツアー)は、主催者と参加者・地域の人々とが課題を共有し、国内外の地域における環境問題解決にむけた取り組みとして関心が高まりつつあります。

■ 2-1.ネパールと日本の友好を育む場として

ネパールツアー

国際協力・環境NGOであるヒマラヤ保全協会は、国際交流・理解促進事業の一環として、異なる文化・価値観を持つ人々が学びあい、啓発しあうことによって新しいつながりや価値観が生まれる場としての「ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール」(エコツアー)を毎年開催しています。
平成4(1992)年から開始されたこの取り組みでは、ヒマラヤをトレッキングし、ネパール・ヒマラヤ山村の民家にホームステイをしながら、参加者みずからが、現地調査や植樹・森林保全・環境保全のための実作業などにボランティアとして従事し、その土地の独自性を生かした村づくりの支援をめざして活動しています。
また、こうした活動が、ネパールと日本の友好を育み、異文化間での学びあいの場となっています。

■ 2-2. 森林保全・環境保全プロジェクトの一環として位置づけています

ネパールツアー

ヒマラヤ保全協会では現在、ネパール国内において植林活動の支援を行う「森林保全・環境保全プロジェクト」をメイン事業として推進しており、山岳エコロジースクールを、このプロジェクトの一環として位置づけています。スクール参加者は村人とともに植樹をおこない、森林再生に貢献しています。> ヒマラヤ保全協会の活動について
ヒマラヤ保全協会の山岳エコロジースクールは、その実践の過程で培われる様々な調査や人的ネットワークが、同プロジェクトの実践や新たな現地支援のプログラムづくりなどにむけて、貴重な財産となっています。
また、その際に実践される現地の村に関する調査やデータのまとめには、ヒマラヤ保全協会創設者の川喜田二郎(現名誉会長)が考案した「KJ法」が生かされていることも、スクールの特色の一つといえます。「KJ法」の活用による効果については、情報収集と整理、報告書の作成といった調査データの蓄積や、それらに基づく村落の活性化に役立つばかりでなく、参加者にとっては、現地調査や国際協力のにおけるノウハウを身につける場の提供にもなっています。 > 「KJ法」についてはこちらです

■ 2-3. 一般市民への国際協力ボランティアの普及をめざして

ネパールツアー

山岳エコロジースクールの実施がもたらす成果としては、活動による双方の文化・習慣や人的交流を介して、日本人にとっては、現地での活動体験によって自然と人間との関係を見なおすきっかけづくりや、国際協力ボランティアの意義に関する学びの場となっています。またネパールの村人たちにとっては、ツアー参加者との協働による就業の場の確保や、国際協力による村の活性化などがあげられます。
また、ツアーそのものの認知度についても、日本社会の中で徐々に浸透を見せており、国際協力NGOが協力して運営している「スタディツアー研究会」が成果を収めています。
日本とネパールの人々の協力による環境保全をスローガンにかかげるヒマラヤ保全協会では、広く一般市民への国際協力ボランティアの普及をめざして、誰もが参加しやすく、魅力あるスクール(ツアー)の実施に尽力しています。

3.ヒマラヤ保全協会のあゆみと山岳エコロジースクール

  -自然環境と生活体験のシンクロナイズ-

■ 3-1. ヒマラヤ保全協会のあゆみ

ヒマラヤ保全協会が再生した森林
ヒマラヤ保全協会が再生した森林

ヒマラヤ保全協会は、ネパール・ヒマラヤにおいて、自然と人間の共生をめざし、地域住民が主体になった環境保全活動をすすめています。KJ法をつかった住民参画方式により、森林保全を中心とした自然環境の保全、住民の生活改善、文化保全、地域の活性化などを有機的にむすびつけて事業をおこなっているのが特色です。また、日本人ボランティアと現地住民が協力して、「ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール」(エコツアー)を毎年開催しています。
当会の活動は、1963年に、川喜田二郎(ヒマラヤ保全協会創設者)が、ネパール西部のミャグディ郡シーカ村で、ヒマラヤの自然を守り、村を発展させるために技術協力をはじめる計画をたてたころよりはじまります。
そして1974年に、川喜田二郎はヒマラヤ技術協力会(ヒマラヤ保全協会の前身)を設立し、森林保全・上水道建設のプロジェクトを開始しました。
その後1986年には、ヒマラヤ保全協会を設立し、プロジェクトをさらに発展させました。
1992年になると、そのヒマラヤ保全協会は、アンナプルナ総合環境保全プロジェクトを開始しました。また、第1回「山岳エコロジースクール」を開催しました。
1997年には、ヒマラヤ保全協会はネパール事務所を開所し、現地での活動を一層強化しました。
2001年には、森林保全3ヵ年計画を開始しました。
そして2005年、新たな森林保全プロジェクトをパルバット郡その他で開始しました。
このように、川喜田二郎とヒマラヤ保全協会は、森林保全と住民の生活を向上させるプロジェクトを多数おこない、山村を活性化させ、ネパールの発展に大きく貢献してきました。この活動はこれからも継続しておこない、ネパールの発展のために今後とも役立ちたいとおもっています。

■ 3-2. ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール

ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール

ヒマラヤ保全協会の「山岳エコロジースクール」は、1992年からほぼ毎年開催されています。現地で進行している当会の事業と一体になって開催されるということが最大の特色です。
2006年12月22日~2007年1月8日には、第13回「ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール」が開催されました。テーマは「環境保全 -世界の屋根ヒマラヤを守れ!」でした。
ネパール・ヒマラヤをトレッキングし、ネパール中西部ミャグディ郡・ナルチャン村にホームステイをしました。ナルチャン村では、日本人ボランティアがヒマラヤ保全協会の現地事業に参加することを主眼に、当協会の事業地を見学、地元の生徒たちとともに植樹もしました。
今回の参加者からだされた数多くの感想の中で、もっとも重要なこととして参加者自身によりピックアップされたのは以下の4点でした。
「生徒たちと一緒に植林をおこなったのがとてもよかったです」
「参加者の皆さんと意見交換することで自分の視野がひろがりました」
「環境と開発のジレンマを感じました」
「観光・交流は、良い悪い両方のインパクトを与えると思いました」
このエコロジースクールは、ヒマラヤは、自然と人間を見つめ直す最適地であり、地域に住む人々や地域の自然そのものが“先生”であるというコンセプトに基づいて、参加者が、ヒマラヤ保全協会の現地協力活動に参加する中で、自然と人間、文化についてまなんでいくというプログラムです。一方で、地元の人々にとっては、日本人とやりとりするなかで、地元をあらためて見直す絶好のチャンスを提供されます。
つまり、現場の資源を有効に活用し、自然や文化を保全しながら地域の活性化をめざすエコツーリズムの実践形態として長年開催されてきました。
今回の開催地・ナルチャン村とその周辺は、その景色・景観のすばらしさにおいて、過去最高でした。ヒマラヤの峰々、氷河、大渓谷、滝、大河といった数々の絶景、お花畑や温泉など、ヒマラヤの自然環境をトレッキングを通して思う存分体験できました。一方、ホームステイを通して村の生活を体験し、村人からのもてなしをうけ、家族とのふれあいや日々の食事をたのしむことができました。
このように、今回のエコロジースクールは、自然環境とホームステイのシンクロナイズが非常に大きな効果を生みだすことを見事に証明したと言えます。背後に自然環境があり、中心に生活体験があります。“大自然”の中ですごすとはこのようなことであり、それは、人間をふくめたエコシステムを知ることです (図)。
私たちは今回、ネパール・ヒマラヤにおけるエコツーリズムの可能性が非常に大きいことを再認識しました。ヒマラヤの村々は、そのための絶好のフィールドとして今後の発展が大いに期待されます。

4.報告書 ~これまでの山岳エコロジースクール~

◆ 第17回山岳エコロジースクール報告書:テーマ「カーストを理解するにはどうすればよいか」[pdf](2009.8.29-9.8)
◆ 第16回山岳エコロジースクール報告書:テーマ「環境保全 -世界の屋根ヒマラヤを守れ!-」[pdf](2009.2.23-3.8)
◆ 第15回 山岳エコロジースクール:テーマ「環境保全 -世界の屋根 ヒマラヤを守れ!-」
(2008.12.21-2009.1.3)
第15回山岳エコロジースクール報告書[pdf]
◆ 第21回 スタディツアー テーマ「森林保全と参加型村落開発」(2008.8.27-9.7)
第21回スタディツアー報告書[pdf]
◆ 第20回 スタディツアー テーマ「森林保全と参加型村落開発」(2008.2.11-2.23)
第20回スタディツアー報告書[pdf]
◆ 第14回 山岳エコロジースクール テーマ「山の暮らしから学ぶエコロジー」(2007.12.21-2008.1.4)
第14回 山岳エコロジースクール報告書[pdf]
◆ 第19回 スタディツアー《夏のスタディツアー2007》 テーマ「ネパール・ヒマラヤの環境保全」(2007.8.2-8.12)
第19回スタディツアー報告書[pdf]
◆ 第13回 山岳エコロジースクール テーマ「氷河の見える秘境の村・ナルチャンをめざせ!」(2006.12.22-2007.1.8)
◆ 第18回 スタディツアー「カトマンドゥ近郊 ダパケル村 ホームステイの旅 8日間」(2006.8.19-8.26)
第18回スタディツアー報告書[pdf]

参加者の感想

何か満たされていなかった私の心に大きな刺激をあたえてくれた

 物質的にはこんなに恵まれているのに、何だか心が満たされない・・・。今の日本社会にこんな思いをいだいている人は多いのではないだろうか?
ヒマラヤ保全協会の「山岳エコロジー・スクール」は、アンナプルナ地域の7,000メートル級の山々をあおぎながらのトレッキングから始まった。草花や野鳥を楽しみながら深い森を歩き、途中でネパールの人々に出会い、文化に触れるというすべりだしだった。
3日間のヒマラヤの自然を満喫したあとに到着したのが小さな村、パウダル村。この村の農家にホームステイし、村人と交流した。現地の竹細工や織物をならったり、農作業を手伝ったりした。さらに、自然の中で暮らす知恵や技を調査、記録するという活動にもたずさわった。ほかに、ヒエを原料にした地酒の作り方をおぼえたり、灰や葉っぱで織機を洗うことを知ったり、野菜や卵・ミルクはもちろんのこと、カゴやマット・座布団のようなものまで自給自足されていること、村人の多くは薬や病院よりも呪術師を信用していることなど、毎日あたらしい発見があった。
ヒマラヤの人々の暮らしは、近代化と人口増加の影響で、環境破壊と伝統文化の衰退に脅かされている。そういった問題に直接ふれ、同じ「地球人」として何ができるかということを村人とともに考えた。さらに、ヒマラヤ保全協会がおこなっている簡易水道整備などの協力現場を訪問し、NGOがおこなっている国際協力について学ぶ機会もあった。
長い間、きびしい自然とともに暮らしてきた、心ゆたかな村人たちとの出会い、力強い自然との出会いは生涯わすれられない思い出になった。この旅は、何か満たされていなかった私の心に大きな刺激をあたえてくれた。

人間の心の豊かさ、たくましさを思い知らされたと同時に、
自分自身や自分を取り巻く環境を見つめ直すことができた

 これまで3回行ったことのあるネパールへまた行きたい、そしてネパールの自然や文化にもっと深く触れてみたいと考えていた。
写真やテレビなどで映し出される美しい山々や、山岳民族の生活に自然環境破壊が大きな影響を及ぼしていることは最近よく耳にする。「一体どういうことなんだろうか?」自分の無知さへの反省と、私にも何かできることはないか、と思った気持ちが、今回の「山岳エコロジー・スクール」への参加と結びついた。
村での生活体験を通じ、各参加者が感心のあるテーマについて仲間や村人と一緒に考え、学び合い、そして記録に残すということが、私たちに与えられた課題。お互いの価値観やニーズを再認識することにより、私たち日本人としての生き方を見つめ直し、さらには社会への還元できると考えるからだ。
私たちの目的地パウダル村は、アンナプルナ山のふもとシーカ谷に位置する。急坂や雪道、地滑り地帯などを丸3日間歩いてたどり着いた。私個人がお世話になったパイジャ家は、窓から8,000メートル級のダウラギリ山の見える村の小高いところにあった。母親と兄弟3人で農業を営む生活だ。石と土で造られた家は大小2つの土間があり、そこで私も寝食をともにして暮らした。
朝は水汲みから始まり、掃除や皿洗いを手伝ったり、日中はヒマラヤ保全協会がおこなってきたプロジェクトを調査、見学。さらに、村人の討論会など、活動し記録することはたくさんある。寒い夜は自然と近所の人々がたき火の周りに集まり、地酒のロキシーを飲みながら歌を歌い続ける。いつしか踊りの輪ができ私も一緒に踊った。
別れの日は泣くまいと思いながらも、村人から花輪を贈られると涙があふれてくる。村人も参加者もみな泣いていた。そして私たちが見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれた姿が今でも脳裏に浮かぶ。
私は村人と自然に包まれた素朴な生活を素直に受け入れ、ひとつひとつの体験を心から楽しむことができた。最新の文明や多くの物質に恵まれていなくても、人間の心の豊かさ、たくましさを思い知らされたと同時に、自分自身や自分を取り巻く環境を見つめ直すことができたことは、とても有意義な体験だった。(会社員)

◆ 過去のサイト
第17回山岳エコロジースクール
第16回山岳エコロジースクール