1. ネパール現地事業

1-1. 森林保全プロジェクト

苗畑管理人
ナンギ村の苗畑管理人のモッティさん。ヒマラヤ保全協会の森林保全プロジェクトを長年指導しており、なくてはならないキーパーソンです。

 2007年度は、合計57,431本の苗木生産、植樹をおこないました(注)。1996年からの12年間で、のべ約71万本を植樹、約1,500ha(東京都の渋谷区に匹敵する面積)の森林を回復させました。

(注)植林プロジェクト(キバン-ナンギ地域)と生活林づくりプロジェクト(ナルチャン・サリジャ地域)の合計本数。

森林保全事業のあゆみはこちらです

(1)植林プロジェクト(キバン-ナンギ地域)を終了しました

 12年間にわたってつづけてきた、「植林プロジェクト(キバン-ナンギ地域)」を、2008年3月をもってすべて終了し、キバン村・ティコット村・アウロ村・ナンギ村の各苗畑を各村にハンドオーバーしました。
 終了時事業評価の結果、森林は確実に再生され、今後は、村の森林委員会の指導のもとで、村人みずからが、森林を維持・管理し、計画的に利用していくことができることを確認しました。

森林再生
植林前後の比較(シーカ付近)

 村人からの感謝の言葉です。

「ヒマラヤ保全協会の皆さんには、本当に長い間ご支援をいただきましてありがとうございました。ご覧の通り、見事な森林がよみがえりました。これからは、この森がふたたび後退することのないよう、私たちがしっかり管理し、まもっていきます。住民は、村のルールをまもって、時期と区域を決めて間伐・枝打ちをおこなうことになっています。また、苗畑は、その役割を十分果たしましたので、規模を縮小し、必要な分だけを栽培することにします」

写真(上)約40年前のシーカ付近(森林はほとんどすべて伐採されていた)出典:中尾佐助・佐々木高明著『照葉樹林文化と日本』くもん出版、1992年。
写真(下):現在(2008年4月)のシーカ付近(森林が再生された)。

(2)生活林づくりプロジェクト(第2フェーズ)を実施しました

事業地の位置図
「植林プロジェクト(キバン-ナンギ地域)」は2008年3月末に終了しました。現在は、「生活林づくりプロジェクト(ナルチャン・サリジャ地域)」を実施中です。また、新プロジェクト候補地(ベガ地域)の事前調査(フィールドワーク)をすすめています。

2007年度の目標を達成しました

 2005年から、ネパール中西部のナルチャン村とサリジャ村ではじめた「生活林づくりプロジェクト」を推進し、その第2フェーズを実施、既存苗畑の規模を約1.5倍に拡大、苗木の生産能力を向上させました。
 苗木は、ナルチャン村では13,575本、サリジャ村では14,160本、合計27,735本をそだてました。植樹は、ナルチャン村では10,510本、サリジャ村では10,376本、合計20,886本を植え、2007年度の目標を達成しました。
 樹種は、ナルチャン村では、マツ(マツ科)、ハンノキ(カバノキ科)、パンユー(バラ科)、マラータ(薪用)、ポンカン(オレンジ)、シッソ(インデアンローズウッド)、トゥーニ(センダン科)、一方のサリジャ村では、マツ(マツ科)、ハンノキ(カバノキ科)、カンニュー(クワ科)、ティムール(ミカン科)などです。

住民が主体になった森林保全活動をすすめました

 ヒマラヤの山岳民族は、森林の中に入り込んだ生活をしており、その暮らしは森林資源に高度に依存しています。そこで、単に木々をそだてるだけではなく、地域住民の生活を積極的にうるおす「生活林」をつくりだすことが住民にとっと非常に重要です。「生活林」とは、薪・家畜飼料・食品・薬品・土壌保全機能など、住民が生活していくうえで重要な機能をかねそなえた、住民の最も重要な生活基盤となる森林のことです。具体的には、果樹の育成、森林資源利用のプログラムに積極的に取り組みました。
 これにより、森林保全活動に、地域住民が今まで以上に主体的に参加するようになってきました。これは、住民みずからがみずからの森をそだてるといった取り組みであり、住民が主体的に参加しながら、持続的継続的に自然環境を再生・保全していくプロセスです。ここには、森林再生と森林利用の循環機能が生じ、ヒマラヤ地域の緑化、水源確保、野生動物の保護、土砂災害の防止などが促進されて自然環境が保全されるとともに、森林資源の供給により地域住民の生活がうるおうという結果があらわれてきます。
 このように、「生活林づくりプロジェクト」によって、住民が主体になった環境保全活動が生まれてきたことにより、ヒマラヤの自然をまもる活動がさらに促進される明るい見通しがでてきました。

織物施設の前で記念撮影
織物施設の前で記念撮影(サリジャ村)。織物(イラクサ加工)施設が完成し、村人は大喜びです。今後、森林資源を有効活用して地域を活性化させるプログラムとして、イラクサ加工・織物事業をすすめていきます。

 紙漉施設と織物施設の建設を開始しました

 森林を保全しながら、地域の森林資源を有効に利用して地域を活性化するために、紙漉(ロクタ紙加工)施設と織物(イラクサ加工)施設の建設をサリジャ村ではじめました。紙漉施設は小屋のみが完成、織物施設は、小屋を建設、既存の5台の織機を設置し、機織りができるようにし、織物事業のための基盤をつくりました。

森林資源運搬のための道を建設しました

 ナルチャン村で、集落と森林とをむすぶ道を建設し、堆肥や薪などの森林資源の運搬や家畜の移動をやりやすくし、住民の労働を軽減しました。

1-2. エコ・プロジェクト(ゴミ処理・観光ルート美化)

ゴミ処理
住民と協力してゴミをあつめる

 ネパールでは、ライフスタイルの変化、ツーリストの流入により、様々なゴミが多量に廃棄されるようになってきました。そこで、ヒマラヤ保全協会では、村にゴミ箱を設置し、ゴミ集積場を建設するプロジェクトを長年おこなっています。
 2007年度は、「環境」と「観光」をキーワードに、トレッキング・ルートであるシーカ-ガーラ・ルートにおいて実施しました。住民を対象にしたワークショップも開催し、環境教育もすすめました。

 

1-3.その他の事業

(1) 緊急支援:アウラ村・崖崩れ対策
 アウラ村で崖崩れがおこり、集落に危険がせまりましたので、防災緊急支援をおこないました。

(2) チベット文化保全(チベット語教育支援)
 ネパール国内の少数民族であるチベット人の子供たちを対象にチベット語教育をおこない、チベット文化保全に貢献しました。

(3) 教育支援(奨学金支給)
 ネパール山村僻地の子供たちを育てるために、めぐまれない小学生53人に奨学金を支給しました。

2. 国内事業

2-1.国際交流・理解促進事業

(1)スタディツアー
 第19回(ナルチャン村)と第20回(サリジャ村)を実施し、ヒマラヤ保全協会の事業地を訪問、現地事業についてまなびました。

ヒマラヤ保全協会ネパール会長
ヒマラヤ保全協会ネパール会長のマハビール=プンさんが来日しました(写真中央)。マハビールさんは、ヒマラヤ保全協会の現地事業を長年リードしています。2007年度、アジアのノーベル賞といわれる「マグサイサイ賞」受賞しました。

(2)第14回山岳エコロジースクール
 景勝地プンヒルをへてサリジャ村に行きホームステイ、山岳のエコロジーについてまなび、植林活動をおこないました。

 

2-2.広報・地球市民学習事業

(1)広報活動
 ・会報「シャングリラ」をカラー化し、4回発行しました。
 ・日本経済新聞などに記事を掲載しました。

(2)ネパールサロンを開催
 第18回:発展とは何か -ラダックから学ぶこと-(Ancient Futures)(ビデオ上映)
 第19回:ためになる!海外旅行写真術 ~ネパールの写真を見ながら~
 第20回:ヒマラヤ保全協会・会員のつどい ~水野会長をかこんで~
 第21回:ヒマラヤをかたる -ヒマラヤ高地とチベット系民族-
 第22回:ネパールのために日本の教訓をいかせ! 2007年スタディツアー&プロジェクト報告会-
 第23回:ヒマラヤ保全協会ネパール会長、マハビール=プンさんを囲む会

(3)ネパール家庭料理教室を開催
 第4回:「チョエラ」(肉のスパイスあえ)と「スタミナ野菜炒め」
 第5回:「チョウメン」(やきそば)と「ミタイ」(ネパール風ホットケーキ)
(4)参画型アプローチ初級講座を開催
 第3~6回を開催、「暮らしと夢」「コミュニケーションと住民参加」について取り組みました。
(5)エコ・ハイキング(自然ふれあいイベント)を実施
 第3回:奥多摩の自然と人のかかわり
 第4回:山小屋泊・丹沢のんびりハイク
(7)グローバルフェスタ2007に出展
 ヒマラヤ保全協会の活動紹介、山岳エコロジースクールの紹介、他

 

ヒマラヤ保全協会のこれまでのイベントの紹介はこちらです

 

ヒマラヤ保全協会 2006年度 事業報告を見る