《第28回ネパールサロン》
-ネパール山村で、暮らしの楽しさ・豊かさをもとめて収入向上事業がはじまる-
ヒマラヤ

 ヒマラヤ保全協会では、植樹による森林保全活動にくわえて、地元の森林資源を利用した織物・紙漉事業をすすめています。織物や紙は、フェアトレードにより販売することができ、地域の人々の貴重な現金収入になります。「植えながら使っていく」ここに、当協会がめざす自然と人間との循環的共生関係を構築していく基礎があります。
 今回は、木から織物や紙ができるまでのプロセスを、現地で撮影された最新の写真を通してくわしくご説明しました。また、特別ゲストとして、ネパール手工芸の専門家・遠藤昭一さん(ヒマラヤンマテリアル代表)にもお越しいただき、現地人の生活にくいこんだ貴重なお話をうかがい、ネパールの伝統工芸について理解をふかめました。参加者はのべ16名と盛況で、白熱した議論がかわされました。

【日時】2009年2月8日(日)15:00~17:00
【会場】ヒマラヤ保全協会事務所
【話題提供】田野倉達弘(ヒマラヤ保全協会理事・事務局長)
【特別ゲスト】遠藤昭一(ヒマラヤ保全協会会員、ヒマラヤンマテリアル代表)

1.ヒマラヤ保全協会の活動方針

(1)第一段階:住民の生活基盤をつくる

 ヒマラヤ保全協会のプロジェクトの第一段階(第一目標)は、ヒマラヤ山村民にとってのしっかりとした生活基盤をつくることです。ヒマラヤの山村民は、森林にきわめて大きく依存した生活様式(ライフスタイル)を今でももっているため、当協会が中核事業としてすすめている森林保全事業は、彼らの生活基盤をつくるために必要不可欠となっています。
 住民の生活基盤がしっかりしたものになれば、防災、農業、食料、保健、衛生、教育などのすべて課題への取り組みが容易になります。そして、住民の命をまもり、彼らの暮らしを改善する道が着実にひらけるのです。

(2)第二段階:環境と調和した開発をすすめる

 プロジェクトの第二段階は、環境と調和した開発をすすめることです。森林資源を利用した収入向上事業、具体的には今回発表した「織物・紙漉事業」や、自然環境と調和した観光開発(エコツーリズム開発)、具体的には「山岳エコロジースクール」などはその具体策として実施しています。
 ヒマラヤ保全協会のプロジェクト地域では、既存のアンナプルナ地域(カリガンダキ東岸域)では第一段階が終了し第二段階へ移行しています。
 2009年4月からはじめる、ダウラギリ地域(カリガンダキ西岸域)では第一段階にまずとりくみ、5年後、10年後には第二段階に移行できるように努力していきます。

2.織物・紙漉の工程

織物グループの女性がイラクサの樹皮をはぐ(サリジャ村)
織物グループの女性がイラクサの樹皮をはいでいるところ(サリジャ村)

■ 織物(イラクサ加工過程)
(1)イラクサの木を切り出す。
(2)イラクサの樹皮をはぐ。
(3)樹皮を、灰と一緒に水に入れ、4~5時間にる。
(4)樹皮をすりつぶし、black layerをとりだす。
(5)トウモロコシの粉を入れた水に24時間つける。
(6)水分をしぼり、天日干しする。
(7)たたく。
(8)繊維をよりあわせる。
(9)糸をつむぐ(糸にする)。
(10)必要に応じて薬草染めなどをおこなう。
(11)布を織る。

紙を漉いているところ(サリジャ村)
紙を漉いているところ(サリジャ村)

■ 紙漉(ロクタ加工過程)
(1)ロクタの木を切り出す。
(2)ロクタの樹皮をはぐ。
(3)ナイフをつかって、樹皮から紙になる層をとりだす。
(4)天日干しする。
(5)12~24時間、水につける。
(6)苛性ソーダ(caustic soda)とともに2~3時間にる。
(7)水であらいながし、小片をつくる。
(8)すりつぶす。
(9)水中にフレームをいれ、すりぶつした繊維をいれ、漉く。
(10)天日干しする。
(11)紙を取り出す。